親と同居していた兄が、親の介護を理由に、遺産のほとんどをもらうと言っています。多めに相続する分には構わないのですが、ほとんどというのはさすがに納得できません。ただ、感情的な対立は嫌ですので、理屈で反論する方法をわかりやすく教えてください。 Show ①親の介護をすれば、なんでも寄与分になるわけではありません。一定の要件をクリアする必要があります。 ②一般的には、介護報酬基準の報酬単価をベースに寄与分を算定することが多いです。 目次
親の介護をした兄弟に反論するときは寄与分の理屈がとても大事親の介護をしていた兄弟が、当然のように多くの遺産を相続しようとすることがあります。ときには、他の兄弟に100万円程度を渡し、それで相続を終わらせようとします。 しかし、その分け方はおかしいとただ言うだけではどうなるでしょうか?曲がりなりにも親の介護をしていたわけですから、言い方によってはもめる原因になります。 では、どの程度の相続分にすれば、双方とも納得するでしょか? 親の介護をしていた兄弟は、勢い、過大な主張をしがちです。 親の介護を理由に過大に遺産をもらおうとする兄弟に対しては、理屈で反論することがとても大事です。 説得のポイントとなるのは、
です。 親の介護が寄与分になる要件親の介護を理由に過大な遺産を相続しようとする兄弟がいる場合、まず考えるべきことは、そもそもその貢献が寄与分になるかどうかです。寄与分にならないのであれば、少なくとも法律上は、相続分は増えません。 親の介護が寄与分になるためには、以下の要件をクリアする必要があります。
以下、要件を一つ一つ見ていきます。 ①相続人自らの寄与があること相続人が自分で親の介護をしていたことが必要です。 介護事業者がサービスを行い、その費用を負担していた場合、この要件をクリアしません。ただし、金銭を支出したという別の寄与行為になりますので、相続分に影響しないというわけではありません。 なお、相続人の寄与と同視できる場合には、配偶者等の寄与も相続人の寄与分として考慮することも許されるとした裁判例もあります。しかし、平成30年の相続法改正により、相続人以外の親族による寄与分は、「特別寄与料」として請求できることになりました(民法1050条)。そのため、相続人以外の親族による寄与分は、原則として、特別寄与料で対応することになります。 行った介護が「特別の」寄与であること寄与分の制度は、条文上、ただの貢献ではなく、「特別の寄与」を対象としています(民法904条の2・1項)。 「特別の」と定められている以上、 【通常期待される程度を超える貢献であることが必要】 です。 つまり、 【親の介護をすれば、なんでもかんでも寄与分になるわけではない】 ということです。 ここは誤解されがちなところですが、とても重要です。 ここまで聞くと、じゃあ「通常期待される程度を超える貢献」かどうかをどうやって判断するんだ、と言いたくなるのではないでしょうか? 寄与分の決め方は、法律上、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」すると定められています(民法904条の2・2項)。一切の事情を考慮しますので、必ずしも明確に寄与分を決められるわけではありません。 しかし、寄与行為の類型に応じて、ある程度の判断基準はあります。
③遺産が維持又は増加したこと寄与分で相続分を増やす以上、遺産を維持したり増やしたりする財産上の効果が必要です。 親の介護であれば、維持を増やすというよりも、余計な経費をかけず、遺産を維持したという財産上の効果であることが通常です。 ④遺産の維持又は増加が行った介護によるものであること(因果関係)相続人の介護により、介護事業者のサービス料金が浮きますので、通常、遺産の維持との因果関係は認められます。 もっとも、介護事業者の様々なサービスを受けていたりすれば、遺産を維持しておらず、因果関係が否定されるかもしれません。 親の介護の寄与分を金銭で計算する方法親の介護を相続分に反映させるためには、寄与分を金銭的に計算し、評価する必要があります。そうでないと、なんとなくの感覚で決めることになり、双方の溝を埋めることが難しくなります。 そのため、親の介護という寄与行為を、寄与分の額という金銭的な評価に変える作業が必要です。 問題は、 【寄与分をどのような算定式で計算するか】 です。 一般的な考え方考え方は分かれますが、一般的に考えられる算定式は、以下のとおりです。
報酬単価は「介護報酬基準」で算出することが多いです。もっとも、介護報酬は資格者(プロ)への報酬であり、親族である寄与者への報酬額とは異なります。それを調整するのが裁量割合で、70パーセント程度が平均と言われています。 なお、親の自宅で在宅介護していたのであれば、家賃が浮きますので、その居住の利益分を差し引く場合があります。ただし、常に差し引くわけではなく、同居の必要性や生活費の分担割合などの事情によりますので、注意が必要です。 東京高裁平成29年9月22日決定介護型の寄与分の算定方法について、比較的最近の裁判例として、東京高裁平成29年9月22日決定があります。参考になる裁判例ですので、簡単に紹介します。 【事案】 【結論】 同居の子(寄与主張者)は、実際の介護の内容や所要時間などを具体的に検討すべきと主張しました。しかし、裁判所は、実際の稼働時間ではなく、介護報酬基準の日当で類型的に寄与分を算定し、同居の子の主張は受け入れられませんでした。 【ポイント】 状況に応じて介護の内容や所要時間は変わるため、実際の稼働時間をベースに具体的に検討すべきとする同居の子の主張が正しいと考える人も多いと思います。しかし、毎日の介護の内容や時間を正確に証明することは困難ですし、介護報酬も行政の基準に基づいて決まっていますので、介護報酬基準という類型的な基準で算定する方法にも一定の合理性があります。 また、寄与分は被相続人に報酬を請求できる権利ではありませんので、アルバイトと同じように単純な時給計算で算定できるわけではありません。 介護型の寄与分の算定方法は誤解しがちですので、寄与分を主張する側も反論する側も注意が必要です。 相続の正しい理解が大事寄与分の要件や計算方法をきちんと知っていれば、親の介護をしていた兄弟に対しても理屈で反論でき、介護をしていなかった後ろめたさで必要以上に相続分を減らすことを避けられます。 寄与分の理屈はとても難しいですが、ポイントだけであれば、素人でもある程度までは対応できます。 もちろん、さらに進んで相続のことを知っておくに越したことはありません。 ・相続相談Q&A ・相続弁護士コラム をご参照ください。全て無料で提供しています。 あなたが形だけの円満相続で後悔せず、「普通の相続」を実現することを祈っています。 もし話し合いの進め方で悩むことがあれば、遠慮なくご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。 スッキリしない相続ではなく、法律どおりの「普通の相続」にしませんか? 東京相続法律事務所は、遺産分割や遺留分請求を中心に、相続に特化した弁護士事務所です。百貨店ではなく専門店ですが、「本当に」相続に力を入れている弁護士をお探しの方はぜひご相談ください。 初回のご相談は無料で行っておりますので、相談希望の方は、お問い合わせフォームからお問い合わせください。遠方の方でも、ウェブ会議でご相談いただくことが可能です。相談予約の方法や弁護士費用などの詳細は、公式ホームページをご覧ください。 介護寄与分の計算方法は?この場合、基本的には、寄与料=介護日数×介護報酬相当額×裁量割合という計算式で考えます。 入院期間・施設入所期間・介護サービスを受けた期間は原則として除かれます。 基本的には、介護保険制度で要介護度に応じて定められている介護報酬基準額によります。 個別的事情にもよりますが、概ね1日5000円~8000円程度です。
寄与分の考え方は?寄与分とは、相続人や親族の中に、亡くなった方の財産の維持又は増加について特別の貢献をした人がいる場合、他の相続人との公平を図るために、その増加をさせた相続人等に対して、相続分以上の財産を取得させる制度です。
遺留分 と寄与分は どちらが 優先するか?しかし、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者にしか、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができないので、結局のところ、寄与分には手出しができないことになってしまいます。 ですから、どちらが優先するか決めるとなると、寄与分優先としておきます。
特別寄与料の要件は?特別寄与料が認められる要件
特別寄与料を請求するための要件は、①請求権者が被相続人に対して療養看護などの労務提供をしたこと、②①によって被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をしたこと、③①が無償であることです。
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